ストーリー・あらすじ紹介　容疑者Ｘの献身

湯川と石神

帝都大学理工学部物理学科の准教授である湯川が、刑事の内海の前で、謎のクルーザー爆発事件がガウス加速器の理論を応用して実行されたことを実験で証明する。高校の数学教師の石神は、アパートの隣に住む靖子が高校生の娘・美里にあいさつをして出かけていく声を聞きながら起きる。出勤前に靖子が経営する弁当屋で弁当を買った石神は、靖子とあいさつをする。

富樫慎二殺害

19時前に、靖子のアパートに元夫の富樫慎二が現れる。金を渡して帰ってもらおうとする靖子。そこに帰宅した美里は、富樫の頭を大きなスノードームで殴りつける。怒った富樫は美里に暴行を振るう。止めようと必死な靖子は、富樫の首にこたつのコードを巻きつけて絞め、美里が富樫の手を押さえつける。富樫は窒息死する。隣の物音を聞いた石神は靖子たちの部屋に行き、中に入れてもらう。

死体発見

公園で死体が発見され、内海と草薙が捜査を担当する。死体の顔がつぶされて指紋が焼かれていたが、乗ってきた自転車の指紋や泊まっていた簡易旅館に残された毛髪から、富樫慎二と断定される。草薙と内海は元妻の靖子を疑うが、死亡推定時刻の12月2日の夜は映画を見ていたと靖子は証言し、半券も持っている。捜査に行き詰まった草薙と内海は、湯川に協力を求めに行く。

17ぶりの再会

最初は興味を持っていなかった湯川だが、靖子の部屋の隣に住むのが大学で一緒だった石神と知る。石神は公衆電話から靖子に連絡し、指示通りに行動するように伝える。家に帰った石神は、訪ねてきた湯川と会う。17年ぶりの再会を果たした2人は、石神の趣味である山登りの話などをする。翌朝、別れ際で湯川の若々しさをうらやましがる石神の言動に、湯川は引っかかる。

湯川の調査

事件に興味を引かれた湯川は、内海を死体発見現場に呼び出して警察の見立てを聞く。「自転車に指紋が残っていたこと」「急いでいたはずなのに服を燃やしたこと」「あえて鍵のかかった新品の自転車を盗んでいたこと」に、湯川は引っかかる。石神を待ち伏せた湯川は、一緒に靖子の弁当屋に行く。石神は、湯川がなにかに気づいていることを感じ取る。

湯川の考え

大学にいる湯川を訪ねた内海は、靖子たちが警察の追及から逃れられるように石神が協力しているという湯川の考えを聞く。石神は次の手として、12月2日に映画館で美里が友人と会っていた話を警察にさせる。靖子は以前にお世話になった工藤の誘いを断りきれず、一緒に食事に行く。車で送ってもらったところを、石神がじっと見ていることに靖子が気づく。

午前休の理由

警察は靖子を犯人とする方針を変更し、富樫が借金をしていた裏社会に目が向けられる。石神の線を捨てていない内海と草薙は石神の働く学校を訪ね、石神が12月2日と3日の午前に休みを取った理由を聞く。石神は風邪や数学の研究と説明する。その後石神は、ホテルのカフェで話をする靖子と工藤を写真に撮影しながら、靖子への脅迫の言葉を口にする。

脅迫

石神が考えたトリックに気づいた湯川は、石神に電話をする。石神は湯川を山登りに誘う。途中の山小屋で、湯川は石神の行為がわかったことをほのめかし、石神が友人のためすべてを言わないと語る。だが石神は、「僕には友だちはいない」と語る。一方、工藤の元にカフェで靖子と話をする様子を撮影した写真と、靖子に近づかないように脅迫する手紙が送られてくる。そのことを知った靖子は、石神が自分に執着心を持つようになったと感じておびえる。

登山

猛吹雪の中、山登りを続ける石神と湯川。途中で転んだ湯川は、石神に助けられる。2人は頂上にたどり着き、石神は景色の美しさに嘆息し、湯川に「謎を解いても誰も幸せにならない」と話す。下山した石神は、靖子に電話をして白と茶の封筒をポストに入れたこと、茶封筒は必ず処分すること、電話で話すのは最後になることを話す。

自首

石神が富樫殺しの犯人として自首する。靖子の行動を監視していたこと、靖子のために富樫を殺したこと、工藤と会う靖子が裏切ったと思って自首したことを事情聴取で話す。真相に気づいている湯川は、研究室で大学生の時に石神と出会ったときのことを思い出している。そこにやって来た内海が、湯川に真相を教えて欲しいと頼む。湯川は「事件の結論は自分に任せて欲しい」と語る。

真相

湯川は靖子と会い、靖子が富樫を殺害したのが12月2日ではなく、12月1日の夜だったことを確認する。留置所で石神と話をした湯川は、石神がホームレスを雇い、富樫の泊まっていた簡易旅館で時間を過ごさせることで毛髪や指紋を残させた上で殺害し、ホームレスの遺体を冨樫と警察に信じ込ませたことを指摘する。

嗚咽

さらに湯川は、すべてを靖子に話したことを語る。だが石神は「仮説にすぎない」として決して湯川の話を認めない。かつて自殺を考えた時に引っ越してきた靖子と美里に救われていた石神は、2人の幸せを心から願っており、幸せそうな表情を浮かべながら拘置所に連行されていく。そこに姿を見せた靖子が、「自分も罪をつぐなう」と石神に告げる。石神はそんな靖子の姿を見て嗚咽し、絶叫する。