3月26日に公開される、水の精・ウンディーネの神話をモチーフにした映画「水を抱く女」を鑑賞した著名人によるコメントが公開となった。
黒沢清監督は「これは驚いた。ドイツ製ダーク・ファンタジーだ。ベルリンの地縛霊が忽然とよみがえり、官能も恐怖も申し分なし。こんなのがあったんだ」と、「スパイの妻」でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞した際に審査員を務めたクリスティアン・ペッツォルト監督の最新作に、驚きの声を寄せた。また俳優の竹中直人は、「止めどなく涙が溢れてしまった。素晴らしい映画だった」と熱いコメントを寄せている。
「水を抱く女」は、「愛する男に裏切られたとき、その男を殺して、水に還らなければならない」という切ない宿命を背負ったウンディーネの神話を、現代のベルリンに幻想的に蘇らせた作品。監督・脚本を務めるのは、ドイツの歴史を描き続けてきたクリスティアン・ペッツォルト。ともにペッツォルト監督の前作「未来を乗り換えた男」に出演したパウラ・ベーアとフランツ・ロゴフスキが出演している。ウンディーネを演じたベーアは、ベルリン国際映画祭とヨーロッパ映画賞で女優賞を受賞する評価を受けている。
【コメント】※敬称略・順不同)
これは驚いた。ドイツ製ダーク・ファンタジーだ。
ベルリンの地縛霊が忽然とよみがえり、官能も恐怖も申し分なし。
こんなのがあったんだ。
---黒沢清(映画監督)
我々音楽家が数百年に渡り常に芸術作品にしてきたウンディーネの伝説をこんなに近くに感じられて、本当に素晴らしい経験になりました。
この映画に関するウンディーネも、やはり物悲しく、切なく、そして神秘的で、芸術的価値のあるものでした。
時折流れるピアノの音も美しく、芯から流す涙を経験しました。
都市伝説好きな日本人にも、是非お勧めです。
---清塚信也(ピアニスト)
チャイコフスキーに「ウンディーネ」を、ドヴォルザークに「ルサルカ」を作らせ、アンデルセンに「人魚姫」を書かせた、魅惑に満ちた『水の精』の神話。
永遠に人々を魅了してやまないウンディーネ(オンディーヌ)の物語が、二人の名優を得て、現代を舞台の映画として登場した。
水の中に消えていく彼女の姿が、恐ろしくも愛しく魅力的で、忘れることが出来ない。
---池田理代子(劇画家・声楽家)
自分がいつかこの世を去る時…
心が張り裂けるくらいに何を自分の瞳に残せるだろう…
狂おしいくらいに確かだったもの…
それは一瞬だけ瞳に焼きついた《映像》なのかも知れない。
止めどなく涙が溢れてしまった。素晴らしい映画だった。
---竹中直人(俳優、映画監督)
「波」という意味のラテン語が語源の名をもつウンディーネ。
やさしく揺らぐような目で海を眺め、潮が引くように力強く男を誘って、深みへと連れていく。
その世界に浸る人は幸せであり、元には戻れない。
相手役をつとめるロゴフスキの演技に感動した。
---ロバート キャンベル(日本文学研究者)
物語としては、とんでもなく奇妙で、ほとんど、いびつ。それなのに、映画としてのこの、溢れる説得力は、なんなのだろう?? すべてにおいて確信犯的(に違いない)なクリスティアン・ペッツォルトのマジックに、心地よく翻弄された。
---岡田利規(演劇作家・小説家・チェルフィッチュ主宰)
「宿命」とは切なく、悲しい。
私自身、舞踊化されたオンディーヌを演じた時に感じたこの感情。
終盤になるにつれ、どんどん引き込まれ、見終わった感覚は、今迄にないものでした。
可哀想なウンディーネ、宿命を恨むほど・・・。最後は涙、涙、涙しました。
---下村由理恵(クラシックバレエダンサー)
パウラ・ベーアの視線に導かれベルリンがミクロの街角からマクロの歴史へと展げられていく快感。
しかし、そこにあるのはひとりの女性への呪いだった。呪いをかけたのは誰か。巨大な悲しみをこの映画は私たちへと投げかける。
---深田晃司(映画監督)
ペッツォルトはいつも幽霊を主人公にする。行き場を失い新たな船出をひたすら待つ存在。
水の精ウンディーネもまた絶えず装いを変えてゆく大都市ベルリンをさまよう孤独な魂だ。
---渋谷哲也(ドイツ映画研究者)
水を抱く女
2021年3月26日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
配給:彩プロ
© SCHRAMM FILM / LES FILMS DU LOSANGE / ZDF / ARTE / ARTE France Cinéma 2020