池田良「女性の葛藤が、男である僕の心にも飛び込んできた」 芋生悠からも 映画「Eggs」鑑賞コメント

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池田良「女性の葛藤が、男である僕の心にも飛び込んできた」 芋生悠からも 映画「Eggs」鑑賞コメント

 ともに卵子提供を望む独身主義女性とレズビアンの同居生活を描く映画「Eggs 選ばれたい私たち」が、4月2日より劇場公開される。ひと足先に鑑賞した映画監督や俳優たちのコメントが公開された。

 「私をくいとめて」を手掛けた大九明子監督は「エッグドナーという道をみずから選んだのは彼女たち自身なのに。“選ばれたい”とか彼女たちに言わせているものの実態は何か」とコメント。俳優の池田良は「結婚・出産・年齢にまつわる女性の葛藤が、男である僕の心にも飛び込んできた」と語り、女優の内田慈は「自分の価値について悩み、責任を果たさなければと思っている全ての人へ力をくれる作品」と称賛している。

 また、文筆家の鈴木涼美は、女性たちが生きていく上でのそれぞれの選択が「できるだけ自由で、無限に多様でありますように」と祈りをささげ、辛酸なめ子は「女性の核の部分と地球のコアが共鳴し、不思議な自己肯定感に包まれます」と独特な表現のコメントを寄せた。

 「Eggs 選ばれたい私たち」は、長編初監督となる川崎僚が、自身の女性としての経験や体験を織りまぜながら、結婚や出産を希望していない30歳目前の女性とレズビアンの女性という2人の人物を通し、社会から求められる女性像と実像のずれに悩みながらも、それでも「母になりたい」と願う女性を描いた作品。法整備が始まったばかりのエッグドナーについて、当事者たちの姿を切り取った作品となっている。

【コメント】 ※順不同
 
ち自身が無数の卵の中から選ばれた1人1人であるという奇跡に気付かされた。
--天野千尋(映画監督「ミセス・ノイズィ」)

「もったいない」
生物に向けて放たれた、ひとつの価値観。
目を逸らすことが出来ないと思った。
受精卵があるから人間がいて、人間がいるから受精卵がある。
命はどこから命なのだろう。
わからないまま、背負って、生きている。
その性がなぜ苦しいのだろうと思った。
--上村奈帆(映画監督「根矢涼香、映画監督になる」「蒼のざらざら」)

「選ばれる」ことを望み、「選ばれた」周囲へ嫉妬し、「選んだ」道に憂慮する。
現社会において、ハラスメントは重要なテーマだが、
男女の差別と区別の境界線は未だ曖昧なままだ。
川崎監督は、等身大の悩みを時代と社会にぶつけ、そこに共生を求める。
自由に見せかけた不自由な世の中を生きる私たちは、彼女達に関心を持てるだろうか。
理解ではない、関心を。
--戸田彬弘(映画監督「名前」「13月の女の子」)

自分の存在が日に日に透明になっていくような、そんな不安を抱えながら主人公の純子は生きているんだろうな。
世界の端っこに小さくでも自分のスタンプを押したいのに、その場所が見つけられない。焦りと痛みがキリキリと伝わってきた。
--吉野竜平(映画監督「君は永遠にそいつらより若い」)

ああ、私たちの人生、どうしてこんなにも選ばなければいけない事が多いのだろう。
幼い頃は自動的に母親になるのだろうと呆然と考えていたのに、生きてゆくうちに次から次へと他の道が増えていく。
多くの選択を前に岐路に立った彼女たちが、物理的に「母親になる」という道を選ぶことによって、満たされない何かを埋めようとする姿に心揺さぶられる。
彼女たちの迸る感情と穏やかな海が混ざり合った時、私はこの作品と共鳴していた。
--藤村明世(映画監督「見栄を張る」『十年 Ten Years Japan「その空気は見えない」』)

子どもを産むために用意した部屋が毎月赤い血となって剥がれ落ちていく。女性は子を産む機械なんて言葉があった。機械のように必要に応じて機能するならどんなに楽だろう。リミットと役割を突きつけられながら、そして囚われながら、走り続ける人間の痛みが、この作品
から叫ばれている。
--野本梢(映画監督「愛のくだらない」)

今を生きる女性たちがぶちあたる壁。そのリアルを川崎監督の作品たちはいつも優しさを持って見せてくれる。いや母のように優しいけれど、全力で迷い続ける少女のようでもあるし、それから戦士のようにしぶといんだよな。そのしぶとさと力強さに、いつも勇気をもらいます。今Eggsで描かれた壁や選択や感情は、10年後、20年後にはどんな風に捉えられるんだろう。観た人とも話したいし、10年後の自分とも話してみたい。
--イリエナナコ(映画監督「愛しのダディー殺害計画」)

どんな生き方もどんな姿も愛したい!抱きしめたいです。人と違うからというのは負い目じゃないし、"人並みの幸せ"って何だろう。死語じゃないかなと感じています。人でも犬でも花でもゲームでも何でもいいから目の前のものを大事に出来るって素晴らしい事じゃないかと。そこにこそ幸せが転がっているんだろうなと思いました。
--芋生悠(女優)

男には量り知ることが難しい、結婚・出産・年齢にまつわる女性の葛藤が、男である僕の心にも飛び込んできた。それだけでも、この作品を見られたことに感謝しました。
そして何より、女性のどんな生き方も肯定する暖かさが、この作品にはあると感じました。
--池田良(俳優)

多様化しているのか、していないのか、わからない時代。やっぱり大多数の価値観が正しいとされるような重圧を感じる複雑な今、自分の価値について悩み、責任を果たさなければと思っている全ての人へ力をくれる作品。ラスト、マイナスに働く公正世界仮説から解き放たれたような登場人物たちが美しい。波打ち際の素足のカットが印象的。どんな波の日もブレずにそこに立っていたいと思った。
--内田慈(女優)

「もったいない」という言葉がしばしば、他者に投げかける言葉として使われるのを聞くたびに耳のあたりがピリリとする。
あなたの人生に無責任な誰かが決めた窮屈な殻のせいで
年を重ね違う道を歩いてゆく友達を区別するのも、
自分で自分を差別してしまうのも、とても悲しいことだ。
どの行先を選択するにも同じくらいの勇気と覚悟がいる。
幸せと正しさの物差しは、それぞれに1つずつ持っていればいい。
選ばれたいと願う彼女たちも、自ら選んでここまで来た。
はじめの一歩を、この映画は一緒に踏み出してくれる。
--根矢涼香(女優)

作られた理想と叶わない現実に
何を求めていたのか、分からなくなる。
私は私として存在していればいいはずなのに。
選ばれたい先に選んだ彼女たちの顔を見て
息のしやすい選択肢が増えることへの反対の声に疑問を持った。
--堀春菜(女優)

赤色が心に突き刺さった。
でも性別とか年齢とかじゃない!楽しく生きたいように生きたらいい!!あなたを愛してくれる人が必ずいる。この作品が生まれた意味を感じました。
--辻凪子(女優)

観ているうちに卵子に退行したくなって、最後の海のシーンで、もしかしたら人間は地球の卵子なのかもしれない、と気付かされました。女性の核の部分と地球のコアが共鳴し、不思議な自己肯定感に包まれます。
--辛酸なめ子(漫画家/コラムニスト)

持って生まれた女の身体とどう付き合っていくか、色々ついている機能をどう使うのか、或いは使わないのか、その選択ができるだけ自由で、無限に多様でありますように。女の子たちの声にはそんな願いが込められている気がした。
--鈴木涼美(文筆家)

【作品情報】
Eggs 選ばれたい私たち
2021年4月2日(金)テアトル新宿にて公開
配給:ブライトホース・フィルム
©「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

  • 作品

Eggs 選ばれたい私たち

公開年 2018年
製作国 日本
監督  川崎僚
出演  出演:寺坂光恵、川合空、 三坂知絵子 、 湯舟すぴか、 新津ちせ、 みやべほの、見里瑞穂、斉藤結女、荒木めぐみ
作品一覧