「漂流ポスト」清水監督と管理人・赤川氏 忘れないことの大切さを訴える 東日本大震災からの心の復興描く

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「漂流ポスト」清水監督と管理人・赤川氏 忘れないことの大切さを訴える 東日本大震災からの心の復興描く
左:赤川勇治氏 右:清水健斗監督

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 東日本大震災で大切な人を亡くした人の”心の復興”を描いた映画「漂流ポスト」が、震災から10年となる本年の3月5日から劇場公開される。

 「漂流ポスト」は、東日本大震災で亡くなった人への想いを受け止めるために作られた、岩手県陸前高田市の山奥に建てられた実在のポストを題材とした30分の短編。東日本大震災で親友の恭子を失ったことを受け入れられずに過ごす園美が、漂流ポストの存在を知り・・・という物語が展開される。漂流ポストの存在を知った清水健斗が、監督・脚本・編集・プロデュースを手がけた。これまで国内外の映画祭などで上映され、ニース国際映画祭やロンドン映画祭などで多くの賞を受賞してきた。

 公開を前に、実際の漂流ポストの管理人である赤川勇治氏と清水健斗監督による記者会見が、26日に都内で開かれた。

 赤川氏は、漂流ポストが生まれた経緯について説明した。震災後に赤川氏が開いていたカフェ「森の小舎」を訪ねる親しい人を亡くした被災者たちが、つらい気持ちを吐き出すことですっきりとした顔になること知ったという赤川氏。遠方の方にも胸の内を吐き出してもらう方法として、震災から3年が過ぎた4年目の3月11日に、「漂流ポスト」として苦しさつづった手紙の受け付けを始めたことを語った。

 清水監督は、「漂流ポスト」を題材に選んだことについて、「背中を押せるような映画を作りたいと考えていたので、そういう役割をしている漂流ポストという題材を見た時に、これだったら被災者の方の心理も考慮して作品を作れるのではないかと思いました」と理由を説明した。

 会場の記者から東日本大震災から節目の10年の公開となることについて聞かれた赤川氏は、「5年、10年というのはメディアの方が作っていることで、漂流ポストは心の復興なんです。この方たちには5年も10年もなく、毎日闇から抜け出そうと必死になっています。区切りをつけるつもりはありません」と、心の復興に区切りはないことを訴えた。

 清水監督も、「被災していない東北以外で過ごしていた方たちは他人事になってしまっている部分もあると思うので、この映画を見ていただいて、3月11日の前後は、教訓を思い出していただき、外の人間が『忘れていないよ』というメッセージを伝えてあげるのが一番いいかなと思います」と、忘れないことの大切さを語った。

 最後に赤川氏は「これだけの苦しさを抱えた方たちがまだまだおいでです。ですので、忘れないでいただきたい」と訴え、清水監督は「僕らが忘れないということが1番大事だと思うので、そういうメッセージを発信できればと思っています。コロナウィルスのことがあって、震災の時同様、人とのつながりが見直されているので、この作品を見て、心の内面の部分、感情的な部分をもう一度感じてもらって、瞬間瞬間を大切に思えるようになっていただければと思います」とメッセージを送った。

漂流ポスト
3月5日(金)よりアップリンク渋谷にて他全国順次公開
配給:アルミード
(c) Kento Shimizu

  • 作品

漂流ポスト

公開年 2021年
製作国 日本
監督  清水健斗
出演  雪中梨世、神岡実希、中尾百合音、藤公太、小田弘二、植村恵、永倉大輔
作品一覧