宿場町

1人の浪人の侍が、ある宿場町にやって来る。宿場町では、女郎屋の馬目の清兵衛と新田の丑寅の一家が対立している。対立によって名産品の絹の市も立たない状態にある。番太の半助が用心棒の口利きをすると浪人に話すが、浪人はめし屋に向かう。めし屋の権爺は浪人を中に入れ、ついて来る半助を追い返す。

対立

めし屋から宿場町の状況を詳しく聞く浪人。先代の清兵衛の跡目争いから、息子である今の清兵衛と一番の子分だった丑寅が対立。丑寅が造り酒屋の徳右衛門を後見人に反旗を翻し、互いにヤクザ者を金で集めている。浪人は宿場町を静かにするために残ることにする。方法を思案した浪人は、丑寅に雇われた3人のヤクザ者を斬り殺す。

用心棒

清兵衛に自分を用心棒として売り込む浪人。浪人は50両で雇われ、外の桑畑を見て桑畑三十郎と名乗る。三十郎は、清兵衛と妻のおりんが抗争が終わったら自分を殺そうとしていることを知る。三十郎が味方になって勢いづく清兵衛は、丑寅の一味と決着をつけようと一家総出で討ち入りをしようとし、気づいた丑寅の一味と外でにらみ合いになる。三十郎は清兵衛たちが自分を殺そうとしているとして用心棒をやめ、高みの見物を決め込む。引っ込みがつかなくなった両者が向かい合うが、八州廻りが来るとの一報が届き、戦いはお預けとなる。

八州廻り

めし屋に戻った三十郎は、もう少しで大ゲンカが起こって共倒れにできたことを権爺に語る。宿場町は普段から何もなかったかのように取りつくろわれ、八州廻りは酒・賄賂・芸者の接待を受ける。めし屋にいる三十郎の元には、自分の味方にしようと清兵衛と丑寅の一味の者たちが誘いに来る。三十郎はどっちつかずの態度を取り続ける。

手打ち

近くの宿場町で役人が殺されたことから、八州廻りは去っていく。いよいよ抗争が再開されると思いきや、清兵衛と丑寅の一味の手打ちが決まる。手打ちを決めたのは、1年ぶりに宿場町に帰ってきた丑寅の一番下の弟である卯之助である。手打ちとなったため、雇われていたヤクザ者たちはお払い箱になる。めし屋で管を巻く荒くれ者の話を聞いていた三十郎は、2人が丑寅に命じられて近くの宿場で役人を殺した犯人と知る。三十郎は2人を捕らえる。

2人のヤクザ者

2人のヤクザ者を清兵衛に引き渡した三十郎は、その足で丑寅の元に向かい、2人を清兵衛が連れ去ったとウソをつく。自分が役人殺しを命じたことが知られるとまずい丑寅は、卯之助に清兵衛の息子の与一郎を誘拐させる。人質交換が行われることになるが、卯之助が交換の場で2人のヤクザ者を銃で撃ち殺してしまう。だが清兵衛は、丑寅の後見人である造酒屋の徳右衛門が囲っている情婦のぬいを捕らえていることを明かす。

小平一家を助ける

与一郎とぬいの人質交換が行われる。めし屋にぬいの夫の小平と幼い息子を呼んだ権爺は、隙間からぬいの姿を見せてやる。息子がぬいに大声をかけたことからぬいが近づく。家族が久しぶりに顔を合わせるものの、すぐに引き離される。賭博で借金をした小平が妻を取られたことを聞いた三十郎は、丑寅の元に向かい、用心棒になると話して前金の30両を受け取る。亥之吉とぬいが囲われている家の様子を見に行った三十郎は、6人の護衛が殺されていると亥之吉にウソをつき、丑寅の元に走らせる。残った三十郎は、6人の護衛を斬り殺し、小平たちに30両を渡して逃がしてやる。丑寅は清兵衛がぬいを連れて行ったと考える。

手紙

清兵衛と丑寅の争いが激しくなり、宿場町は路上に多くの死体が転がるほど荒廃する。ある日、めし屋で酒を飲む三十郎は、小平の家族から受け取ったという手紙を権爺から渡される。そこに現れた卯之助と亥之吉が、小平たちを見た者がいることを話し、三十郎が逃がしたことを疑う。卯之助は手紙を見つけ、捕らえられた三十郎は拷問を受ける。

拷問

ぬいの居場所を言うように命じられるものの口を割らない三十郎は、さらに厳しい拷問を受ける。見張りがいなくなった時に、三十郎は長持の中に隠れる。見張りは三十郎が逃げたと思って外に出る。そのすきに三十郎ははいつくばって床下に逃げる。三十郎を探す卯之助たちが出ていったのを見計らい、はいつくばって権爺の元に逃げ込む。

棺桶

権爺は、三十郎が清兵衛の家に向かったと卯之助たちにウソをつく。丑寅一家は清兵衛の屋敷を煙責めにし、清兵衛や妻のおりん、息子の与一郎を殺す。一方、棺桶に隠れた三十郎は、権爺と権爺に言いくるめられた亥之吉によって、棺桶に入れられたまま墓場に運ばれる。念仏堂に隠れた三十郎は、やがて回復する。

対決

権爺が捕らえられたことを棺桶屋から聞いた三十郎は、棺桶屋から刀を受け取って宿場町に戻る。卯之助を始めとする丑寅の一家が総出で三十郎を迎え撃つ。卯之助に包丁を投げて手に持つ銃を落とし、斬りつける三十郎。さらに、他の丑寅一家の面々を次々に斬り殺していく。宿場町には静けさが戻り、三十郎は宿場町を1人で去っていく。

人物 1 用心棒

桑畑三十郎

俳優:三船敏郎 桑畑三十郎は、風来坊の浪人である、映画「用心棒」の登場人物。「桑畑三十郎」は本名・・・ではなく、「桑畑」は名前を聞かれた時に桑畑が目に入ったことから、「三十郎」は年齢が三十代であることが取られている。またもうすぐ「四十郎」になると語る。剣が立ち、複数の相手を一気に斬り倒す姿を見せる。両腕を服の中に入れて歩く。 ふらりと訪れ・・・
人物 2 用心棒

卯之助

俳優:仲代達矢 卯之助は、丑寅兄弟の末弟である、映画「用心棒」の登場人物。旅に出ていたが、1年ぶ・・・りに宿場町へと戻ってくる。拳銃(スミス&ウェッソン)を武器にし、首にはスカーフを巻いている。丑寅に清兵衛一家との手打ちを進言する冷静さを見せる。だが、丑寅によって役人の殺害を命じられた2人の荒くれ者が清兵衛一家に捕らえられた時には、清兵衛の・・・
人物 3 用心棒

権爺

俳優:東野英治郎 権爺は、宿場町の居酒屋の主人である、映画「用心棒」の登場人物。抗争が続く状態に嫌・・・気が差しており、死体が増えて繁盛している棺桶屋のカナヅチの音にいら立っている。三十郎に飯を食わせ、宿場町の状況を教え、宿場町から出ていくように話す。 三十郎に対してはじめはいら立っているが、八州廻りのお付きの者が賄賂を受け取る様子を一緒に・・・
セリフ・名言 1 用心棒

権爺「隣の桶屋だよ。近頃、この町で景気がいいのはこいつばっかりだ。棺桶が毎日飛ぶように売れるのさ」

0:11:05頃 行く宛もない風来坊の浪人が、ある宿場町にやって来る。宿場町では・・・清兵衛一家と丑寅一家が対立しており、抗争によって死者も出ていた。浪人は居酒屋の主人である権爺から町の状況を聞く。棺桶はこのあと、死体を入れる以外の目的でも使われることになる。 ・・・
セリフ・名言 2 用心棒

権爺「この宿場にゃ、絹市の代わりに人殺しの市が立ってるんだい」

0:12:20頃 行く宛もない風来坊の浪人が、ある宿場町にやって来る。絹市で知ら・・・れる宿場町だったが、清兵衛一家と丑寅一家が対立しており、抗争によって死者も出ていた。浪人は居酒屋の主人である権爺から町の状況を聞く。 ・・・
セリフ・名言 3 用心棒

三十郎「まあ考えてみろ。清兵衛や丑寅、その他博打打ち、無宿者がみんなくたばったら、この宿場もすっきりするぜ」

0:15:20頃 ある宿場町にふらりとやって来た浪人の三十郎は、宿場町が清兵衛一・・・家と丑寅一家の対立によって荒廃していることを知る。宿場町の状況を教えてくれた権爺に三十郎が言うセリフ。権爺はそんなことはできないと思うのだった。 ・・・
音楽 1 用心棒

音楽(佐藤優)

早坂文雄の遺作を編曲した「生きものの記録」(1955)以後の黒澤明監督作を担当し・・・ていた佐藤勝が、「用心棒」の音楽も担当している。 ・・・
キーワード 1 用心棒

評価、興行収入

「用心棒」は、キネマ旬報ベストテンで日本映画の2位に選ばれる評価を受けた。桑畑三・・・十郎を演じた三船敏郎は、ヴェネチア国際映画祭の男優賞やブルーリボン賞の主演男優賞を受賞した。アメリカのアカデミー賞では、衣装デザイン賞(白黒)にノミネートされた。興行的には、日本国内で3億5千万を超える配給収入となり、1961年の邦画の4位・・・
キーワード 2 用心棒

荒野の用心棒、ダシール・ハメット

「用心棒」は、クリント・イーストウッド主演の西部劇「荒野の用心棒」(1964)と・・・してリメイクされた。リメイクは無断で行われ、のちに東宝が裁判で勝訴している。一方で、「用心棒」はダシール・ハメットの小説「血の収穫(赤い収穫)」を下敷きにしていることを、黒澤明が認めている。1996年にはブルース・ウィリス主演のギャング映画・・・
キーワード 3 用心棒

宿場町

「用心棒」の舞台となるのは宿場町である。場所は明言されていないが、強いからっ風と・・・絹市が立つことから上州と思われる。宿場町では、絹問屋の多左衛門を後ろ盾にした清兵衛一家と、造り酒屋を後ろ盾にした丑寅一家が対立している。抗争による死者によって棺桶屋が繁盛し、三十郎が宿場町を訪れた時には人間の手首をくわえた犬が走っている。 ・・・
作品一覧