数あるスティーヴン・キング原作の映画でも、シリーズ最長を誇るのが本シリーズだ。元になった原作はキングの短編小説『トウモロコシ畑の子供たち』。劇場作品10本に加え、2009年に作られたTVドラマ『スティーヴン・キング トウモロコシ畑の子供たち』まである。シリーズと言っても各作品に連続性は乏しく、同じ原作をベースに恐怖世界を生み出しているので、厳密にシリーズ作と言っていいのか、かなり微妙なところだが、作り手たちのマインドを刺激し続けていることだけは間違いない。
昨年の夏には、シリーズ1作目が4Kレストアされたことを機に、3作目までが日本で初めて劇場公開され、マニアの間で話題になった。筆者が特に驚いたのがVHSマスターをデジタル化したものまで1回限りだが、劇場のスクリーンにかけたことだ。当然だが、かなりボヤボヤの映像なはずだが、それも見たいと駆け付けたファンもかなりいたことは驚きだった。その『チルドレン・オブ・ザ・コーン<4K>』と2作目『チルドレン・オブ・ザ・コーン2/最後のいけにえ』、3作目『チルドレン・オブ・ザ・コーン3/都会の収穫』の3作品を収録したBD-BOXが発売された。
あらすじはざっとこんな感じだ。第1作目では、トウモロコシの邪神によって、田舎町ガトリンで子どもたちが次々と大人たちを殺戮。子どもだけの町になった場所に、若いカップルが通りかかり、いけにえになってしまう。
第2作では、町での大殺戮が明らかになり、マスコミが殺到する中、三流タブロイド紙の記者と息子が、残っていた子どもたちに殺されそうになる。
そして第3作では舞台を都会に移し、田舎で父親を殺したイーライと、兄ジョシュアが都会にやってきて、工場の跡地でトウモロコシを育て始める。イーライは教祖となり、周囲を巻き込んでいく。
1作目のヒロインが『ターミネーター』(1984)のリンダ・ハミルトンだったり、3作目の製作総指揮が『ワックス・ワーク』(1988)や『ヘルレイザー3』(1992)のアンソニー・ヒコックスだったりと、一応の顔ぶれが並ぶものの、日本でビデオ化された際の評価は著しく低かった。その原因は今見ると懐かしさを感じるほどのチープな特撮や、4:3のテレビサイズに変換され、VHSならではの低画質だったことが要因ではないかと思う。ホラー作品の場合、暗めの表現が肝でもあるので、本シリーズのようにナイトシーンが多い作品の場合、致命傷になりかねない。
自分の場合、今回、レストアされた作品を見直して、明らかに評価が変わったことを実感した。どこまでも広がるトウモロコシ畑の見事な撮影、人の気配が感じられない、もぬけの殻となった町の風景など、映像の手触りが全く異なっている。音声は全作品、2chのステレオ収録だが、サラウンド再生することによって、当時のホラー映画が持つショッキング効果がしっかり確認できた。
各作品とも90分程度のサクッとした内容なので、同じスティーヴン・キング原作でも『キャリー』(1976)や『シャイニング』(1980)のような重さはないのだが、あの頃のホラー映画を今、楽しむという意味では納得できるクオリティだし、正当な評価にもつながるリマスター版と言えよう。是非、大画面&大音量で再生してもらいたい。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【商品情報】
『チルドレン・オブ・ザ・コーン3作BD-BOX【数量限定】』
BD3枚組発売中/¥15,840(税抜価格¥14,400)
発売・販売:キングレコード
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