須藤の殺人

7年前。暴力団組長の須藤純次は、両手を結んだ状態の佐々木賢一を橋から川に落として殺害する。そして、逃げた舎弟の日野の交際相手である順子を日野の目の前でレイプし、大量の覚醒剤を打って殺害。生きた日野と順子の遺体にガソリンをかけて放火する。さらに、両方の殺人の共犯者である舎弟の五十嵐を車の中で射殺する。須藤は逮捕され、死刑判決を受ける。

須藤の告白

現在。雑誌「明潮24」の記者である藤井修一は、須藤と面会するように編集長から命じられる。須藤と面会した藤井は、須藤から明かしていない3件の余罪があるという話を聞く。3件の余罪には、須藤が「先生」と呼んで慕っていた木村孝雄が背後におり、自分がかわいがっていた舎弟の五十嵐を殺すように仕向けた木村を許せないために告発したと語る。編集長からは手を引くように言われた藤井だったが、内緒で調べ始める。一方で、藤井の母親は認知症で、妻の洋子は介護で疲れ果てている。

藤井の調査

岩槻インターと大宮駅の中間にある土地を持つ「山」のつく名前の老人を殺害し、木村が土地を転売したという須藤の話の裏付けを始める藤井。藤井は、「島神」という人物が所有していた転売された土地を見つけ、木村が一時期所有者になっていたことを突き止める。島神を埋めたという場所に向かった藤井だが、埋めた場所はわからず、わかっても木村が別の場所に移した可能性が高いと考える。別件の遺体を焼却炉で燃やした事件について、須藤から焼却炉を所有していた森田を訪ねるが、6年前の事故で森田は植物状態となっている。

憔悴する洋子

事件について編集長に報告する藤井だったが、物証がないため記事にすることは却下される。そのことを藤井から告げられた須藤はブチ切れる。調査を続けることにした藤井は、須藤の愛人だった遠野静江と会う。静江は木村に世話になったことを話し、須藤のことは「情にもろい」「憎めないヤツ」と話す。一方、藤井の妻の洋子は、認知症の義母からは手を上げられ、藤井は仕事に夢中で助けにならないことに憔悴を深める。

焼却炉

調査を続けることにした藤井は、3件目の保険金殺人を依頼したという電気屋に向かうが、電気屋の家族は何も語ろうとしない。木村商事の事務所にやって来た藤井は、事務所で木村が人をヒモで絞め殺すイメージを見る。(以降、過去にさかのぼって描かれる)金を貸していた男を絞め殺した木村は、須藤に助けを求める。駆けつけた須藤は、死体を車に乗せて木村の知人である森田の元に連れて行く。須藤と木村はいやがる森田をおどし、死体をバラバラにして焼却炉で燃やす。

生き埋め

クリスマスに、木村は須藤の愛人である静江の娘にランドセルをプレゼントする。また須藤は、五十嵐と日野を舎弟にする。次に木村は、島神が所有する土地に目をつける。福祉施設の職員の協力で島神を見つけた木村は、須藤に頼んで殺害してもらい、森田の焼却炉で燃やそうとする。だが森田が断ったために、山神を生き埋めにする。木村は山神の土地を転売し、1億7千万を手に入れる。

保険金殺人

須藤の刑務所仲間である佐々木賢一が出所し、須藤が歓迎会を開く。佐々木が組から金を求められていると聞いた須藤は怒る。5,000万円の借金を作った電気屋の牛場の家族から保険金目当ての殺害を頼まれた木村は、酒で体を壊している牛場を監禁してむりやり酒を飲ませ、自然死と見せかけて殺そうとする。

佐々木を殺害

佐々木が組から求められた金を払ったと聞いた須藤は、五十嵐を連れて佐々木の組の頭である飯島を殺しに行く。だが、飯島から出所祝いを払ったと聞かされた須藤は、佐々木がウソをついていることに気づく。佐々木を捕まえた須藤は、川に落として殺害する。家に帰りたいと話す牛場だったが、木村から電話を受けた牛場の家族は酒を飲ませ続けるように頼む。

舎弟を殺害

須藤や木村は牛場に酒を飲ませ続け、電気ショックも与える。ついに牛場は死に、自然死に見せかけるため森に捨てられる。須藤の舎弟である日野は、佐々木とつながっていたと疑われていることを知り、身の危険を感じて恋人と逃げる。須藤と五十嵐は、日野の恋人を殺し、生きた日野にガソリンをかけて火をつける。警察に追われる須藤は逃げ切れないと観念する。そんな須藤に、五十嵐が裏切ろうとしたと木村が吹き込む。須藤は五十嵐を殺害する。

逮捕される藤井

(現在に戻る)木村を追う藤井は、会社にも出勤せずに調査を続ける。事件についてまとめたレポートを再び編集長に提出した藤井は、記事化を強く求める。木村に話を聞こうと何度も自宅に足を運ぶ藤井は、木村から連絡を受けていた警察に逮捕される。面会に来た妻の洋子に取材の意義を語る藤井だったが、洋子は母親を任せっきりの藤井に対してもう限界であることを告げる。

記事

藤井と編集長は警察に資料を提出し、「明潮24」に事件の記事を掲載する。警察が動き、保険金殺人を共謀した容疑で、牛場の家族や木村が逮捕される。保険金殺人のみの立件だと木村は無期懲役にとどまることに納得がいかない藤井は、他の事件についても調査を続けようとする。一方で、洋子からは母親を以前から殴っていることを告白され、離婚を求められる。

公判

藤井は、木村の公判での須藤の証言を傍聴する。須藤は、木村への復讐心だけではなく、自分の死刑を遅らせる目的もあったことを明かす。須藤の公判で証言した藤井は、キリスト教に入信しておだやかに「残された人生で償いたい」と語る須藤に対し、「あなたは生きていちゃいけない」と怒りを爆発させる。

木村との面会

藤井は洋子と離婚せず、以前から洋子に言われていたとおりに、母を施設に入れる。無期懲役となった木村と面会した藤井は、木村を一番殺したがっているのは藤井であることを指摘し、面会を切り上げる。面会室には藤井が1人で残される

人物 1 凶悪

藤井修一

俳優:山田孝之 藤井修一は、雑誌「明潮24」の記者である、映画「凶悪」の登場人物。認知症の母、妻・・・洋子と3人暮らし。母の世話を洋子に任せており、疲れ果てた洋子から施設に入れるように頼まれているが、決断できずにいる。 死刑囚である須藤純次が3つの殺人事件を告白した手紙を編集長から受け取り、面会をして断ってくるように言われる。須藤と面会し・・・
人物 2 凶悪

須藤純次

俳優:ピエール瀧 須藤純次は、暴力団桜川会元組長の死刑囚である、映画「凶悪」の登場人物。人を殺すこ・・・とに罪悪感を持たない残忍な性格である一方で、自分が信頼した身近な人々に対しては情に厚い面がある。裏切られることを何よりも嫌う。人を殺す意味で「ぶっこむ」という言葉を使う。覚醒剤常用者。鯉の入れ墨をしている。 不動産ブローカーの木村と知り合・・・
人物 3 凶悪

木村孝雄

俳優:リリー・フランキー 木村孝雄は、周囲から“先生”と呼ばれている不動産ブローカーである、映画「凶悪」の・・・登場人物。茨城で建築資材を販売する「木村商事」を経営する一方で、宅建の免許を持たないにもかかわらず物件の売買をしていた。福祉施設の職員である福森と共謀し、土地を奪い取れる老人を探していた。 借金を返済しないことに怒り、菅原を絞殺。須藤に死・・・
セリフ・名言 1 凶悪

須藤「そのすべての事件の首謀者は、自分が“先生”と呼んでいた男です。そいつがのうのうとシャバで生きているのが許せねえ」

0:11:45頃 3件の余罪について明かした死刑囚の須藤の元に、雑誌「明潮24」・・・の記者である藤井が面会に訪れる。須藤は今になって余罪を明かした理由を語る。須藤は“先生”と呼ばれる人物を心からうらんでいるのだった。 ・・・
セリフ・名言 2 凶悪

芝川「まるで犯罪小説じゃない」

0:14:45頃 「明潮24」の記者である藤井は、死刑囚の須藤と面会して聞いた3・・・件の余罪についてまとめ、編集長の芝川に提出する。この時はまだ須藤の話が半信半疑だった藤井だが、調査を進めるうちにのめり込んでいく。 ・・・
セリフ・名言 3 凶悪

須藤「これは、五十嵐への弔いでもあるんです。どうせ死ぬなら、きれいになって死にてえ」

0:17:05頃 木村という人物が関わったとされる、須藤の3件の余罪について調べ・・・る藤井。記事にできるかはわからないものの調査をしてくれる藤井に対し、須藤は頭を下げてお願いする。だがその須藤こそが恐ろしい犯罪の実行犯なのだった。 ・・・
音楽 1 凶悪

もろびとこぞりて(Joy to the World! the Lord is come)

「もろびとこぞりて(Joy to the World! the Lord is ・・・come)」は、日本でもポピュラーなクリスマス・キャロル。「凶悪」では、木村や須藤たちが子どもたちと開くクリスマスのホーム・パーティのシーンで使われている(0:52:45頃)。 ・・・
音楽 2 凶悪

音楽(安川午朗)、サウンドトラック

「凶悪」の音楽を担当しているのは安川午朗。発売されているサントラ(サウンドトラッ・・・ク)には、以下の曲が収録されている。 1.JOY TO THE WORLD 2.中毒者との決別 3.最大の敵は身内にあり 4.孤狼の死 5.外回り営業 6.土地の場所 7.葬いのカチコミ 8.横領の裏側 9.裏切り者 10.木村を捉える藤・・・
キーワード 1 凶悪

評価

「凶悪」は、日本アカデミー賞で「優秀作品賞」「優秀助演男優賞=ピエール瀧、リリー・・・・フランキー」「優秀監督賞」「優秀脚本賞」に選ばれる評価を受けた。また、ブルーリボン賞では、ピエール瀧が助演男優賞を受賞した。 ・・・
キーワード 2 凶悪

原作、実話、上申書殺人事件

「凶悪」の原作は、「凶悪 -ある死刑囚の告発-」(新潮45編集部編)である。原作・・・は、1999年に起きた殺人事件を死刑囚が告発し、新潮45編集部が調査をして犯人逮捕につながるまでを描いたノンフィクションで、10万部を超えるベストセラーとなった。事件は「上申書殺人事件」と言われており、3件の殺人が告発されたが、立件されたの・・・
キーワード 3 凶悪

明潮24

「明潮24」は、「新潮45」をモデルにした雑誌である。編集長の芝川理恵のモデルは・・・、当時の「新潮45」の編集長だった中瀬ゆかりである。事件の調査に執念を燃やす藤井修一のモデルは、当時の「新潮45」の記者だった宮本太一である。木村に関する事件を掲載したことで、雑誌の売上が伸びる。藤井が同僚の記者と、二世議員とグラビアアイド・・・
作品一覧