栗林中将の着任
2006年の硫黄島には、あちこちに戦闘のあとが残されている。戦跡を調査している調査隊は、布の袋を見つける。1944年6月の硫黄島。栗林陸軍中将が、本土の最終防衛線とされる硫黄島の司令官として着任する。栗林は、塹壕掘りに文句を言った西郷一等兵を殴りつける上官を止める。また、塹壕掘りを中止させ、兵士に休息を取らせるように命じる。
バロン西
栗林は、陸軍と海軍の連携が取れていないことに頭を抱えながらも摺鉢山に登って作戦を立て、住民を本土へと移すように命じる。その後栗林は、西陸軍中佐との再会を喜ぶ。西はオリンピックの馬術で金メダルを取った人物だった。一方西郷は、射撃訓練でミスばかりし、上官から全員の靴磨きを命じられる。
栗林の作戦
頼みの綱の連合艦隊は壊滅的な打撃を受け、本国からの応援も得られないことがわかり、栗林は海岸線での防衛をあきらめ、洞窟を掘って持久戦に持ち込む作戦を立てる。多くの将校の反対に遭うものの栗林は押し切る。一方、西郷の連隊に清水という男が新しく配属される。西郷と親しい野崎は、清水が元憲兵であることを見抜く。
西郷の過去
西郷は野崎に、パン屋をやっていたこと、憲兵隊がパンを持っていったこと、最後は道具を取られたことを語る。そして、おなかに赤ん坊がいる妻を置いて出征したことを思い出す。栗林は洞窟掘りに反対する将校の大杉を日本に帰すことに決める。栗林に反論する大杉に対し、栗林は「最後の一兵に至るまで島を死守する」「日本の我々の子どもが日本で1日でも長く安泰に暮らせるなら、我々がこの島を守る1日には意味がある」と大杉に語る。
米軍の攻撃
米軍による爆撃が始まり、兵士に犠牲者が出る。西は愛馬を失う。長期間に渡って続く爆撃に、洞窟の兵士たちは憔悴の色を濃くしていく。ついに米軍の艦隊が硫黄島に近づいてくる。栗林は全兵士に対し、「最後の一兵になっても敵を踏みとどめる必要がある」「予は常に諸士の先頭にある」と語り、「天皇陛下万歳」と万歳三唱をする。
米軍の上陸
兵士や将校は、家族への手紙を書き、千人針を腹に巻き、神棚にお祈りをする。排泄物の入ったバケツを捨てに洞窟から外に出た西郷は、アメリカの艦隊が海を埋めつくしているのを見る。米軍が硫黄島に上陸する。砂浜がアメリカ兵でいっぱいになるのを待ち、栗林は総攻撃を命じる。多少の犠牲が出るものの、アメリカ軍に大きなダメージを与える。
自決
やがて戦況は悪化し、重要拠点である摺鉢山の防衛が困難になる。摺鉢山防衛の指揮官である足立は、栗林に玉砕の許可を求める。栗林は認めないが、足立は独断で兵士たちに玉砕を命じる。仲間が手榴弾で自決するものの、西郷は逃げようとする。清水が西郷を止めようと銃を向ける。西郷は、栗林が北の部隊との合流を足立に指示していたことを説明する。清水は銃を降ろす。
伊藤中尉
洞窟を通って逃げた西郷と清水は、伊藤中尉の部隊と合流する。擂鉢山から逃げてきた西郷たちを、「卑怯者」として刀で切ろうとする伊藤。だが、そこに現れた栗林が伊藤を止める。栗林は最後まで戦うように命じて立ち去る。その後、栗林の考えに否定的な林の命令によって、伊藤の部隊は摺鉢山の奪還に向かおうとする。だが、アメリカ軍の攻撃にあい、すぐに洞窟に退却する。洞窟に戻った伊藤は、部下を率いてやって来た西から、栗林の命令を聞かないことを責められる。伊藤は、戦車を地雷で巻き添えにしようと、1人で去っていく。
負傷兵
戦況が悪化する中、栗林の元に大本営から援軍は送らないとする通知が届く。西は、負傷したアメリカ兵を助けさせる。納得がいかない衛生兵だったが、命令に従う。情報を聞き出そうとする西はアメリカ兵に、かつてアメリカに住んでいたこと、オリンピックに出場したこと、メアリー・ピックフォードと知り合いであることを英語で語りかける。西とアメリカ兵は、握手をする。
サムの手紙
戦いに嫌気が差した西郷は投降を決意する。清水はそんな西郷に、上官の命令に背いて、ある家の犬を殺さなかったことから憲兵隊をクビになった話をする。栗林は、アメリカ軍の将校から拳銃(コルト)を贈られたアメリカのパーティを思い出す。西は負傷した米兵のサムが持っていた手紙を読み上げる。手紙はサムの母からで、サムの身を心配する内容だった。兵士たちは手紙の言葉に聞き入る。
西の最期
爆風が起こり、西は両目を負傷して見えなくなる。西は大久保に隊を預け、自分を置いて北の部隊と合流するように命じる。そして、置いていってもらったライフルで自決する。無駄死にしたくないと考える清水は、一緒にアメリカ軍に投降するように西郷に頼む。先に向かった清水は上官に見つかるが、逃げることに成功する。
清水の死
アメリカ軍に投降した清水だったが、見張りとして残されたアメリカ兵によって射殺される。大久保の隊の一員として北部に向かう西郷は、清水の死体を発見して涙を流す。西郷たちは、栗林のいる本部へと到着する。西郷は栗林に、過去に2度助けられたことを話す。栗林は「2度あることは3度あるかもな」と声をかける。いよいよ最後の時を覚悟した栗林は、最後の報告を大本営に向けて書く。
栗林の最期
栗林は西郷に書類の焼却を命じ、部下を率いて総攻撃をかける。書類を燃やす西郷は、本国に送られなかった兵士たちの手紙を土中に埋める。撃たれて重傷を負った栗林は、林に首を斬り落とすように頼む。刀を構えた林はアメリカ兵に撃たれる。そこに、西郷がやって来る。栗林は自分の死体を埋めるように西郷に頼み、銃で自らの頭を撃ち抜く。西郷は栗林の死体を埋める。
手紙
アメリカ兵に見つかった西郷は、アメリカ兵の1人が栗林の銃をベルトに挟んでいることに気づき、シャベルを振り回して暴れる。頭を殴られた西郷はタンカで運ばれ、海に沈む夕日を見つめる。現代の硫黄島。発見された布の袋から、届くことのなかった兵士たちの多くの手紙が土の上に落ちる。硫黄島の砂浜では、波が静かに満ち引きしている。
人物 1
硫黄島からの手紙
俳優:渡辺謙
栗林忠道は、大日本帝国陸軍の中将である、映画「硫黄島からの手紙」の登場人物。実在・・・の人物である。「硫黄島の手紙」では以下のように描かれている。
かつてアメリカ駐在の経験があり、その時に贈られた拳銃(コルト)を大切にしている。アメリカ軍の将校に対し、「アメリカと日本は戦争をするべきではないが、戦いとなったら信念に従う」と・・・
人物 2
硫黄島からの手紙
俳優:二宮和也
西郷昇は、大日本帝国陸軍第312連隊の一等兵である、映画「硫黄島からの手紙」の登・・・場人物。かつては大宮でパン屋を営んでいたが、道具を供出させられたために廃業。妻の花子が妊娠中に召集令状を受け取り、硫黄島へと派遣される。娘の顔を見れておらず、生きて帰りたいと強く願っている。銃の扱いは下手で、戦闘では弾薬を運ぶ係を担当してい・・・
人物 3
硫黄島からの手紙
俳優:伊原剛志
西竹一は、大日本帝国陸軍の中佐である、映画「硫黄島からの手紙」の登場人物。バロン・・・西とも呼ばれていた実在の人物である。「硫黄島の手紙」では以下のように描かれている。
1932年のロサンゼルスオリンピックの馬術で、愛馬ウラヌスに乗って金メダルを獲得。カリフォルニアに住んでいたことがあり、流暢な英語を話す。メアリー・ピック・・・
セリフ・名言 1
硫黄島からの手紙
0:02:30頃
妊娠中の妻の花子を残して硫黄島へと派遣されていた西郷。アメリカ・・・軍との戦いを前にして、西郷は砂浜で塹壕を掘る。そんな自分たちの様子について、西郷が花子に書いた手紙の文章。このあと栗林の命令で塹壕掘りは中止となる。
・・・
セリフ・名言 2
硫黄島からの手紙
0:06:45頃
硫黄島に総司令官として着任した栗林。着任したばかりの栗林は、休・・・憩も取らずに島を調べようとする。栗林は形だけの見学ではなく、アメリカ軍と戦うための具体的な策を練るために、歩きながら島を調べる。
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セリフ・名言 3
硫黄島からの手紙
0:08:00頃
硫黄島に総司令官として着任したばかりの栗林は、塹壕掘りに不満を・・・漏らしたために上官に殴られる西郷たちを見かける。上官を止めた栗林の言葉。西郷はこのあとも栗林のおかげで助けられるのだった。
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音楽 1
硫黄島からの手紙
「硫黄島防備の歌」は、最後の突撃を前にした栗林が、栗林の故郷である長野県の子ども・・・たちの歌声を、無線を通して聞く曲(2:02:00頃)。
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音楽 2
硫黄島からの手紙
「硫黄島からの手紙」の音楽にクレジットされているのは、マイケル・スティーヴンスと・・・クリント・イーストウッドの息子であるカイル・イーストウッド。発売されているサントラ(サウンドトラック)には、以下の曲が収録されている。
1. メイン・テーマ
2. 手紙のモンタージュ
3. 戦闘への準備
4. 自決
5. 敵の砲撃
6. ・・・
キーワード 1
硫黄島からの手紙
「硫黄島からの手紙」は、アカデミーの4部門(作品賞、監督賞、脚本賞、音響賞/編集・・・)にノミネートされ、「音響賞/編集」を受賞した。また、LA批評家協会賞の作品賞、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞も受賞した。興行的にはアメリカでヒットとはならなかったが、日本では51億円の興行収入となり、2007年の外国映画の4位となった・・・
キーワード 2
硫黄島からの手紙
「硫黄島からの手紙」は、クリント・イーストウッド監督作「父親たちの星条旗」(20・・・06)とともに、「硫黄島プロジェクト」の1本として扱われた作品。「父親たちの星条旗」は、アメリカ側の視点から第二次大戦時の硫黄島の戦いを描いていた。「父親たちの星条旗」製作のために資料を集めたイーストウッドが、アメリカ人も日本人も変わらない・・・
キーワード 3
硫黄島からの手紙
「硫黄島からの手紙」の原作には、栗林忠道が家族に宛てて書いた手紙『「玉砕総指揮官・・・」の絵手紙』(吉田津由子 編)がクレジットされている。映画内で栗林の手紙が引用されているシーンがあるが、映画の内容は栗林の硫黄島着任から玉砕までを描いている。また、西郷をはじめとする多くの架空の人物が登場する。
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