ばけもん

昭和8年12月。8歳の少女すずは、両親、兄の要一、妹のすみと、広島の江波で暮らしている。海苔を届けに町に出かけたすずは道に迷う。「ばけもん」を名乗るおじさんにさらわれそうになり、1人の少年と知り合う。昭和10年8月。家族で祖母の家を訪ねたすずは、屋根裏から出てきた少女と出会う。すずは少女にスイカを用意し、着物を置いて帰る。

  

嫁入り

昭和13年2月。すずは兄を海軍の訓練で失ったばかりの同級生である水原哲の代わりに、海の絵を描いてやる。太平洋戦争が始まり、昭和18年4月には兄の要一が出征する。その後、すずに呉の北條周作という人物から縁談がある。昭和19年2月、北條の家で結婚式が行われ、すずは嫁入りする。

  

北條すず

北條すずとしての新しい生活が始まる。周作はすずと以前に会ったことがあると言うが、すずは覚えていない。すずは早起きして水をくみ、炊事や洗濯をし、隣組の人たちと配給の手伝いをし、焼夷弾が落ちた時の注意について学ぶ。絵が得意なすずは、ノートに図解つきでメモをとる。娘の晴美と帰ってきた周作の姉である径子が、しばらく家にいることになる。径子は嫁に出ていたが、夫は亡くなっていた。

  

里帰り

径子が帰ってきたため、すずは広島に里帰りする。すずの妹のすみは、すずの頭にハゲができているのを見つける。呉に戻ったすずは、広島が恋しくなってしまい元気がない。そんなすずを、周作は元気づけようとする。径子が嫁ぎ先に戻ったため、すずが炊事を担当するようになる。配給が少なくなっていく中、すずは工夫して食事をやりくりする。

  

径子

空襲警報が鳴る回数が増えていき、北条家の庭には防空壕が作られる。建物疎開で嫁ぎ先が下関に移ることになった径子は、離縁して晴美と家に戻ってくる。すずは周作から、径子には息子の久夫もいるが、跡取りのために嫁ぎ先と一緒に下関に行ってしまったことを聞く。ある日、山で軍艦の絵を描いていたすずは、憲兵にスパイと間違われる。そのことを知った家族は、のんきなすずがスパイと間違われたことに爆笑する。

  

リン

夏になる。配給はどんどん少なくなり、砂糖は貴重品となる。アリから砂糖を守ろうとしたすずは、水がめに砂糖を水没させてしまう。サンはへそくりをすずに渡し、闇市で買ってくるように話す。砂糖を買ったすずは遊郭で迷子になってしまい、遊女のリンに道を教えてもらう。リンは、かつてすずがスイカと着物をあげた貧しい少女だった。

  

水原

ある日、海軍で巡洋艦「青葉」に乗る水原哲がすずを訪ねてくる。周作は離れに水原とすずを一緒に泊めさせる。水原はすずを求めるが、すずは周作を愛していることから求めを断る。すずは謝り、周作への怒りを覚える。そんなすずの様子を見た水原は、普通でまともなすずの姿に安心する。後日、すずは自分と水原を一緒に泊めさせた周作と大ゲンカになる。

  

空襲

冬になる。晴美といる時に空襲となったすずは、思わず空を見とれてしまったところを周作の父である円太郎に助けられる。やがて空襲の回数は増え、規模も大きくなる。春になる。周作は一等兵曹となり、3カ月の訓練に出ていく。さみしがるすずだったが、家で待っていると周作に話す。5月15日、化粧をしたすずは、軍服を着た周作を送り出す。

  

時限爆弾

6月22日、空襲でケガをして入院した円太郎を晴美と見舞いに行くすず。帰り道で空襲にあい、近くの防空壕に入れてもらう。空襲が去ったあと、晴美と手をつないで歩くすずは、空襲で落とされた時限爆弾の爆風によって右手を失い、晴美は死んでしまう。径子はすずのことをうらみ、すずは自分のことを責める。

  

ひどくなる空襲

7月1日の空襲で、呉の市街が焼け野原となってしまう。家にも焼夷弾が落ちるが、すずが必死に消火して燃えずに済む。すずは晴美のことで自分を責め続ける。ある日見舞いにきた妹のすみは、すずに広島に帰ってくるように話す。外にいる時に空襲にあったすずは周作に助けられる。すずは周作に「広島に帰る」と告げる。

  

原子爆弾

8月6日、広島に帰る準備をするすずに、気兼ねなしに居場所を決めるようにやさしく話す径子。すずは呉に残る決意をする。その時、広島に原子爆弾が落ち、すずは広島の家族を心配する日々を送る。8月15日、ラジオで玉音放送を聞いたすずは、今まで我慢して戦ってきたことが無駄になってしまったと感じ、畑で号泣する。

  

少女

苦しい生活が続くが、前を向いて生き始めるすず。1月になり、すずはようやく広島の祖母の家に身を寄せる妹のすみと再会する。母は原爆で行方不明となり、父はその後倒れて亡くなっていた。原爆症で弱気なすみをすずは励ます。帰り道で周作と会ったすずは、世界の片隅に自分を見つけてくれたことに感謝を述べる。そんな2人の前に、原爆で親を失った少女が現れる。少女を呉に連れ帰るすずと周作。すずの家族は、少女を迎え入れることにする。

  

人物 1 この世界の片隅に

北條すず

俳優:のん 北條すず(ほうじょう すず)は、広島の江波から呉に嫁入りする、映画「この世界の片・・・隅に」の登場人物。旧姓は浦野。江波で海苔の養殖をしている両親の元に生まれる。兄の要一、妹のすみとともに育つ。自他ともに認める「ボーッとした」性格の持ち主だが、絵を描くのが得意。8歳の頃、町で「ばけもん」に誘拐されそうになった時に少年時代の周・・・
人物 2 この世界の片隅に

北條周作

俳優:細谷佳正 北條周作(ほうじょう しゅうさく)は、すずの夫である、映画「この世界の片隅に」の・・・登場人物。呉の丘の上に両親と住んでいる。仕事は、呉鎮守府の軍法会議録事(書記官)。少年時代に「ばけもん」によってすずと一緒に連れ去られそうになったことがある。すずのことをずっと覚えており、名前だけの情報から苦労してすずを探し求め、縁談を申し・・・
人物 3 この世界の片隅に

水原哲

俳優:小野大輔 水原哲(みずはら てつ)は、すずの小学校時代の幼なじみである、映画「この世界の片・・・隅に」の登場人物。小学生の頃に兄を海軍の訓練で失い、両親が気力をなくしてしまったことから、自身も無気力となっている。学校の課題の風景画も描かずに丘の上から海を見ていたところをすずに見つかり、代わりにすずに白波をウサギに見立てた絵を描いてもら・・・
セリフ・名言 1 この世界の片隅に

すず(ナレーション)「うちはよう、ぼーっとした子じゃあ言われとって」

0:00:30頃 「この世界の片隅に」の最初のセリフ。このあと、すずが海苔を町に・・・届けに行くために乗せてくれた船の船頭にも「ぼーっとしとらんで」と言われる。さらにすずはこのあと、家でも嫁ぎ先の北条家でもぼーっとしていると言われるのだった。 ・・・
セリフ・名言 2 この世界の片隅に

すず(ナレーション)「いろいろあるが、ほいでも子供でおるんも悪うはない。いろんなもんが見えて来る気がする」

0:06:55頃 幼い頃のすずが、両親や兄妹と祖母の家を訪ねた時の言葉。すずは屋・・・根裏から出てきてスイカの皮を食べる少女の姿を目撃する。すずは実のあるスイカと着物を少女のために置いていくが、みんなから座敷わらしを見たと言われるのだった。 ・・・
セリフ・名言 3 この世界の片隅に

すず(ナレーション)「“そいつは座敷わらしに違いない”。お兄ちゃんがほう言った夕方、景色も人も優しゅうかすんで見えた」

0:08:15頃 少女時代のすずは、夏の祖母の家で屋根裏から出てきてスイカの川を・・・かじる少女を見る。だがそのあと少女は現れなかった。帰り道でのすずの言葉。少女は座敷わらしではなかった。すずは、この時の出来事を忘れずに生きていくのだった。 ・・・
音楽 1 この世界の片隅に

悲しくてやりきれない

「悲しくてやりきれない」は、「ザ・フォーク・クルセダーズ」が1968年にリリース・・・した曲。「この世界の片隅に」では、幼き日のすずが広島に海苔を届けるオープニングで、コトリンゴがカバーしたバージョンが使われている(0:02:15頃)。 ・・・
音楽 2 この世界の片隅に

野ばら

「野ばら」は、ゲーテの詩にシューベルトが曲をつけた歌曲。「この世界の片隅に」では・・・、結婚式の夜に布団で雑誌を読む周作が鼻歌で歌っている(0:20:45頃)。 ・・・
音楽 3 この世界の片隅に

隣組

「隣組」は、1940年にレコードが発売された戦時中の流行歌。テレビのお笑い番組「・・・ドリフ大爆笑」のオープニングで、歌詞を変えられたバージョンが使われた曲としても知られる。「この世界の片隅に」では、呉に嫁入りしたすずが隣組の活動に参加するシーンで、コトリンゴがカバーしたバージョンが使われている(0:24:00頃)。 ・・・
キーワード 1 この世界の片隅に

評価、興行収入

「この世界の片隅に」は、日本アカデミー賞の最優秀アニメーション作品賞を受賞した他・・・、優秀音楽賞に選ばれた。また、キネマ旬報ベスト・テンでは2016年の邦画の1位となった。アニメーション作品が1位となったのは、「となりのトトロ」(1988)以来である。 東京国際映画祭でのワールドプレミアのあとに一般公開された。当初は全国・・・
キーワード 2 この世界の片隅に

原作、製作

「この世界の片隅に」は、「アクション」に連載されたこうの史代による同名漫画を原作・・・としている。原作を読んだ監督の片渕須直がこうの史代に手紙を書き、アニメ映画化が実現した。製作費の問題などから、原作にあるリンと周作にまつわるエピソードなどがカットされている。また、終戦を迎えて号泣するすずのセリフなどが変更になっている。 ・・・
キーワード 3 この世界の片隅に

広島市、呉市

「この世界の片隅に」の舞台となるのは広島市と呉市である。すずは広島市南部の江波の・・・出身で、祖母の家は草津にある。江波と草津の間の海は大潮の時には人が歩けるようになり、すずたちが歩いて草津に向かう様子が描かれている。また、広島県産業奨励館(のちの原爆ドーム)や相生橋などが登場する。すずが嫁入りする北條家があるのは呉市である・・・
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