ストーリー・あらすじ紹介　ステキな金縛り

弁護士・宝生エミ

生前は有名な弁護士だった父を持つ宝生エミは、自身も弁護士となるが、うまくいっていなかった。そんなエミに、ボスの速水悠は殺人事件の弁護を担当させる。美術品バイヤーの矢部鈴子が殺害された事件で、夫の矢部五郎が逮捕されていた。五郎と接見したエミに、五郎は事件の時には奥多摩の旅館で金縛りにあっていたというアリバイを主張する。

旅館

エミは、矢部が泊まった旅館の女将が、犯行時刻に矢部が部屋にはいなかったと証言していることを知る。奥多摩の旅館にやって来たエミは、矢部が泊まっていた部屋の隣の耳鳴りの間で眠り込んでしまったために、女将は矢部の姿を見なかったと推理する。雨のために戻れなくなったエミは、耳鳴りの間に泊まることにする。

落ち武者の幽霊

布団に入ったエミは、金縛りに襲われる。目を開けたエミの前には、落ち武者姿の男がいる。落ち武者は、更科六兵衛という武士の幽霊だった。六兵衛は、矢部が泊まった時にも、矢部にまたがって金縛りにあわせていた。裁判で証言するように頼むエミ。最初は断っていた六兵衛も、矢部が無実の罪で有罪となりそうなことを聞いて考えを変える。六兵衛もかつて、敵と通じているぬれぎぬを着せられて、仲間によって打首にされたのだった。

タクシー

エミと六兵衛は、タクシーで法律事務所にいる速水の元に向かう。途中、六兵衛が見えないタクシーの運転手やファミレスの店員に、独り言を言っていると思われて怪しまれるエミ。だが、六兵衛が見えるファミレスの客もいる。事務所についたエミと六兵衛だが、速水には六兵衛が見えない。速水に六兵衛の存在を信じさせるため、六兵衛を残してエミは部屋を出ていく。エミがいないときの速水の行動を六兵衛から聞いたエミが速水に伝え、速水は六兵衛の存在を信じるようになる。

エミの家に

六兵衛を自宅に連れていくエミ。エミと同棲している役者の工藤万亀男には六兵衛は見えないが、六兵衛を歓迎する。エミは、裁判の証人として六兵衛を申請する。六兵衛、エミ、万亀男は親しくなっていき、万亀男が出演するドラマの合戦シーンを六兵衛とエミが見学した際には、興奮した六兵衛がカメラの前に飛び出して映ってしまう。

子孫

エミと六兵衛は、郷土史研究家の木戸健一を訪ねる。木戸は六兵衛の無実を信じている。その理由が、木戸が六兵衛の子孫だからであることをエミと六兵衛は知る。裁判が始まる。六兵衛が証人として呼ばれているが、日が暮れないと六兵衛は姿を現すことができない。エミのボスの速水がタップダンスして時間を稼ぐが間が持たない。エミと速水は日の入りまでの休廷を申し出て、認められる。

幽霊の証人

日の入り後、裁判が再開する。六兵衛が幽霊という説明に納得しない検事の小佐野。だが、砂鉄を使って浮かび上がった六兵衛を見た裁判長は、六兵衛を証人として認める。六兵衛の声は一部の人にしか聞こえないことから、笛菓子を拭いて、1回の音は「はい」、2回の音は「いいえ」として証言をしてもらうことにする。だが、小佐野は反対する。その小佐野には六兵衛が見えていると思われることを、六兵衛がエミに話す。小佐野が話している時に六兵衛が大声で邪魔をすると、小佐野は六兵衛に対して怒鳴ってしまう。それでも、小佐野は見えていないと主張する。

共通点

六兵衛が見える人物の共通点を探るエミは、六兵衛が見えるファミレスで会った男、町で会った女、法廷画家から話を聞く。そして、最近仕事がうまくいっていないこと、最近死を身近に感じたこと、シナモンが好きという共通点に気づく。インド料理屋で食事をする速水の元を訪れたエミは、六兵衛が見える条件を話すが、速水はとぼける。六兵衛が死後の世界から連れてきた、最近死んだ速水の愛犬ラブの幽霊を見た速水は、思わず駆け寄ってじゃれてしまい、見えていることがバレてしまう。速水は、六兵衛を証人とすることを認める。

あの世の公安局員

裁判が再開する。裁判前の六兵衛の前に、あの世の公安局公安課の段田譲治が姿を現す。段田は、この世を騒がせている六兵衛を、あの世に強制送還しようとする。だが、検事の小佐野は、裁判が終わるまで待つように段田を説得する。裁判では、六兵衛に証言をして欲しくない日野勉に雇われた陰陽師の阿倍つくつくが現れて、六兵衛を退散させようとするが、段田によって吹き飛ばされてしまう。

やり込められるエミ

事件のあった時に矢部にまたがっていたことを証言する六兵衛。だが、検事の小佐野は、六兵衛が仲間を裏切って打首になったと歴史書に書かれていることを引き合いに出し、六兵衛の証言は信用できないと主張する。小佐野にやり込められたエミは、励ます万亀男に冷たくする。万亀男は家を出ていってしまう。

六兵衛があの世に

エミと六兵衛は、夜の公園のベンチで話をする。父親を10歳の時に亡くしたさみしさを語るエミを、六兵衛はなぐさめ、もっと自信を持つように励ます。矢部と接見したエミは、被害者の鈴子を六兵衛に見つけてもらえば良いと思いつく。さっそく六兵衛が探しに行くものの、見つからない。そんな六兵衛を段田が迎えに来る。段田に好きな映画「スミス都へ行く」を見せて時間猶予をもらったエミは、六兵衛が希望していた慰霊碑が立つ予定の場所に六兵衛を連れていく。六兵衛は感謝を述べ、あの世に去っていく。

真相に気づく

エミは、六兵衛が鈴子を見つけられなかったのは、死んだのが矢部鈴子ではなく、姉の日野風子だったためと考える。風子と夫の勉に会ったエミは、鈴子が風子を殺して風子になりすましていると確信する。その報告を入院中のボスの速水にしている最中に、速水の容体が急変。死にゆく速水に、あの世の段田へのメモを託す。メモを見てやって来た段田に、エミは段田の好きな映画「素晴らしき哉、人生！」を見せる代わりに、死んだ風子を呼び出すように頼む。

真犯人

裁判が再開する。エミは、風子を証言台に立たせる。証言台にいるのは、風子ではなく鈴子であると主張するエミ。エミは死んだ風子を呼び出し、鈴子に風子の姿を見せる。風子は、自分を殺したのは鈴子であると証言する。風子の証言を、検察官の小佐野も認める。勉は逃げ出そうとするが、係員に止められる。矢部は無罪となる。

父との再会

裁判の後、誰もいない法廷にやって来たエミの前に、六兵衛が現れる。だが、エミには六兵衛が見えなくなっている。六兵衛はエミの父輝夫を連れてきていたが、エミには見えない。輝夫は、「アルプス一万尺」をハーモニカで吹いて、エミに気づかせる。エミは父に話しかけ、父はハーモニカで答える。エミは1人ではなく、父が見守ってくれていることを実感する。