辞書編集部

1995年。玄武書房の辞書編集部。長年に渡って辞書づくり一筋に勤めてきた荒木公平が定年退職することになる。辞書の監修を務めている松本朋佑は、荒木がいなくては辞書が作れないと考えている。もう1人の辞書編集部員の西岡正志は頼りない。荒木は後継者を探し、営業をしている馬締光也に目をつける。馬締は大学で言語学を学んでいた人物で、コミュニケーション能力に欠けるために、営業には向いていなかった。

大渡海への思い

「右」の言葉の意味を「西を向いた時の北の方」と答えた馬締。馬締が辞書制作に向いていると考えた荒木は、馬締を辞書編集部に招く。辞書編集部では、新しい辞書「大渡海」の編集会議が開かれる。中型辞書の「大渡海」は、現代語や俗語といった言葉も掲載した「今を生きる辞書」にしたいと松本が熱く語る。馬締は松本の情熱に打たれて辞書づくりに真剣に取り組むようになり、下宿「早雲荘」の大家であるタケからは「ちょっといい男になった」と言われる。

荒木の退職

これまでに集められた用例採集カードの言葉と他の辞書に掲載されている言葉の照らし合わせの作業を始める馬締たち。膨大な量のチェックに、西岡は飽きてしまうが、馬締は情熱を燃やす。38年に渡って辞書を作ってきた荒木の退職の日がやって来る。松本は荒木がいなくなることにさみしさを感じている。荒木は馬締に、長年使ってきた袖カバーを贈る。

香具矢との出会い

辞書づくりには人との協力が必要であることが分かった馬締は、コミュニケーションに自信が持てず、悪夢を見たりもする。だが、そんな馬締に対し、タケは積極的に人に話しかけるようにアドバイスする。馬締は西岡に対して自分から話しかけるようになる。ある夜、馬締は部屋に出入りするネコの「トラ」を追いかけていき、林香具矢と出会う。香具矢はタケの孫で、東京の料亭で修行をするためにタケと同居をはじめたのだった。馬締はひと目で香具矢に恋に落ちる。

恋に落ちた馬締は仕事が手につかなくなる。馬締の恋を知った編集部のメンバーは、馬締を連れて香具矢の働く料亭に行く。西岡は香具矢の容姿を褒め、「彼氏がいる」と馬締に話す。ある夜、香具矢への電話を馬締が取り次ぐ。その電話は香具矢の元恋人からで、香具矢はもう電話してこないように話す。気分が落ち込む香具矢を見た馬締は、「切る」の言葉の意味を説明しようとして例に「関係を切る」を挙げてしまいあわてる。そんな馬締の姿に、香具矢は「みっちゃんて面白いね」と話し、励まそうとしてくれたお礼を言う。

恋文

編集部の契約社員である佐々木薫のアドバイスもあり、馬締は恋文を書き始める。ある日、馬締は香具矢が合羽橋に買い物に行くのに付き合う。包丁の説明をしてくれる香具矢の言葉を、馬締は熱心に用例採集する。香具矢が遊園地に誘い、観覧車に乗る2人。香具矢が「女が板前をやるって変かな?」と聞くが、馬締は「そんなことない」と即答する。馬締は書き上げた恋文を西岡に読んでもらおうとするが、筆で書かれた恋文に西岡はあきれる。そこに、大渡海が中止になるというウワサが流れていることを、西岡が恋人の麗美から聞く。

制作中止の危機

大渡海の制作を継続させるために、西岡は原稿の外部発注を前倒しして既成事実を作る。その上で西岡と馬締は、大渡海の中止を検討している村越局長を説得する。村越は、辞書や辞典と名のつくものは辞書編集部で制作することを条件に、大渡海の継続を認める。さらに、村越は西岡に宣伝部への異動を命じるものの、馬締は知らない。その一方で、馬締は筆で書いた恋文を香具矢に渡す。

成就

西岡の異動を知った馬締はショックを受けるが、西岡は「馬締なら大丈夫」と励ます。一方、恋文の返答を待つ馬締は、帰宅した香具矢から読めない恋文を渡したことを責められる。香具矢は料亭の大将に読んでもらい、恥ずかしい思いをしたのだった。香具矢は口で言うように馬締に頼み、馬締は「好きです」と告げ、香具矢は「私も」と受け入れる。馬締は「恋」の語釈を書き上げる。大渡海は見出し語の選定作業に入るが、西岡の異動が近づく。自宅に西岡と麗美を招いた馬締は、西岡に感謝を述べる。酔っ払っていた西岡は涙を流し、勢いで麗美に結婚のプロポーズをする。

12年がたち

12年がたち、2008年となる。馬締と香具矢は結婚し、タケの亡くなったあとの早雲荘に住んでいる。大渡海は、主任となった馬締を中心にコツコツと進められている。嘱託として、荒木も手伝ってくれることになる。香具矢は、小料理屋「月の裏」を開いている。辞書編集部に、ファッション雑誌の編集者だった岸辺みどりが配属される。みどりは、根気のいる辞書作りに困惑する。

辞書づくりの醍醐味

ファッション用語の語釈のチェックをして残業するみどりは、久しぶりに辞書編集部を訪ねた宣伝部の西岡と初めて会う。自らの実体験に基づいて用例を書いた「ダサい」の語釈について、西岡がみどりに説明する。みどりは辞書づくりの醍醐味を感じるようになり、やる気を出していく。馬締はぬめり感のある紙にこだわり、装丁も決まり、徐々に大渡海の完成が見えてくる。

校正作業

1年後、校正も大詰めとなり、アルバイトなどを増やした辞書編集部は多くの人であふれている。大渡海の発売は翌年の3月に決まる。そんな中、「血潮」の単語が抜けていることが発覚し、校正作業を止めて見出し語の漏れがないことをチェックすることになる。スケジュールを遅らせないために、スタッフは泊まり込みで作業をする。一方で、松本が体調不良で入院してしまう。

松本の病気

見出し語の再チェックが終わり、馬締と荒木は松本の見舞いに行く。馬締と荒木に、松本は食道がんを患っていることを明かす。2人は大渡海の完成を急ぐ決意をする。正月も休まずにようやく大渡海の校正を終えた馬締は、松本の入院する病院にゲラを持っていくが、松本はゲラを見ることなく亡くなる。葬儀のあと、間に合わなかった悔しさをにじませる馬締を、香具矢がそっとなぐさめる。

出版記念パーティ

大渡海の出版記念パーティが開かれる。会場の隅には、松本の写真が飾られている。松本の妻の千恵は、馬締に感謝を述べる。荒木は、生前の松本からもらっていた手紙を馬締に見せる。手紙には、荒木や馬締への感謝がつづられている。馬締と荒木は、辞書づくりへの思いを新たにし、明日から始まる改訂作業への意気込みを見せる。その後、馬締と香具矢は松本の家を訪ね、帰り道で松本が愛していた海を2人でながめる。馬締は「これからもお世話になります」と香具矢に告げ、香具矢は「みっちゃんて、やっぱりおもしろい」と返すのだった。

人物 1 舟を編む

馬締 光也

俳優:松田 龍平 馬締光也は、玄武書房の辞書編集部員である、映画「舟を編む」の登場人物。大学時代で・・・言語学を学んでおり、わからない言葉があれば辞書を引く。大学時代から「早雲荘」に下宿しており、大家のタケが新しい下宿人を募らなくなったことから、タケと2人で暮らしている。 営業部に所属していたが、コミュニケーション能力の低さから営業成績はよ・・・
人物 2 舟を編む

林 香具矢

俳優:宮﨑 あおい 林香具矢は、タケの孫娘である、映画「舟を編む」の登場人物。27歳。高齢のタケの面・・・倒を見るためと、板前修業のために京都から東京にやって来る。タケが大家をしている「早雲荘」に住み、馬締と知り合う。湯島の「梅の実」で板前修業をし、早雲荘でも煮物の練習をして馬締に味見をしてもらったりもする。馬締からラブレターを受け取るものの達・・・
人物 3 舟を編む

西岡 正志

俳優:オダギリ ジョー 西岡正志は、玄武書房の辞書編集部員である、映画「舟を編む」の登場人物。辞書編集部・・・での馬締の先輩。明るく軽い性格でコミュニケーション能力が高い。玄武書房に勤める三好麗美と付き合っているが、会社ではあまり大っぴらにしていない。辞書の監修を務める松本からはあまり信頼されていない。 辞書編集部を支えてきた荒木公平が定年で退職・・・
セリフ・名言 1 舟を編む

松本「荒木君がいなければ、私は辞書を作れません」

0:01:00頃 出版社・玄武書房の、影の当たらない部署である辞書編集部。辞書一・・・筋で38年に渡って勤めてきた荒木が、妻の体調が良くないこともあって定年で退職することになる。新しい辞書「大渡海」の制作を前にして、辞書の監修を務める松本は、長年に渡ってともに辞書を作ってきた荒木がいなくなることの影響力の大きさにショックを受・・・
セリフ・名言 2 舟を編む

荒木「“右”という言葉を説明できるかい?」

0:10:05頃 定年で退職することになった荒木は、自分に代わって辞書制作を任せ・・・られる人物を探す。辞書編集部員の西岡に教えられた馬締という人物に、荒木は「右」の意味を聞く。答えることができた馬締を、荒木は辞書編集部に引き抜く。 ・・・
セリフ・名言 3 舟を編む

松本「言葉の意味を知りたいとは、誰かの考えや気持ちを、正確に知りたいということです」

0:16:45頃 玄武書房の辞書編集部は、新しいタイプの辞書「大渡海」を作ること・・・になる。大渡海の監修を務める松本が、「大渡海」の辞書の方針を語る。松本は新しい言葉を探すために合コンに出席するなど、辞書づくりに熱い情熱を持っていた。 ・・・
音楽 1 舟を編む

音楽、サウンドトラック

「舟を編む」の音楽を担当しているのは、渡邊崇。本作で日本アカデミー賞優秀音楽賞に・・・選ばれた。発売されているサントラ(サウンドトラック)には、以下の曲が収録されている。 1.端書き 2.早雲荘の夜 3.大渡海と青春 4.尚書き:軽快 5.はじめてのデート 6.逡巡 7.馬締夫妻の朝食 8.袖カバーの継承 9.馬締光也のテ・・・
キーワード 1 舟を編む

評価、興行収入

「舟を編む」は、日本アカデミー賞の13部門で優秀賞に選ばれ、6部門(作品賞、主演・・・男優賞=松田龍平、監督賞、脚本賞、録音賞、編集賞)で最優秀賞となるなどの評価を得た。興行的には約8億円の興行収入となった。 ・・・
キーワード 2 舟を編む

原作小説、三浦しをん

「舟を編む」は、2012年の本屋大賞を受賞した、三浦しをんの同名小説を原作として・・・いる。原作ではあいまいとなっている時代設定を1995年から2008年に規定し、麗美も玄武書房に務めているといった違いがある。 ・・・
キーワード 3 舟を編む

時代設定

原作ではあいまいとなっている時代設定を、映画では1995年から2008年に規定し・・・ている。PHSが登場したばかりで、コンピューターの普及もこれからといった時代背景が描かれている。また、用例採集される言葉には、「ネットファーフィン」「チョベリグ」「コギャル」「MK5」「ルーズソックス」「BL」「キモイ」といった時代を感じさ・・・
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